物語と思想
記憶の穴と、改竄できない記録
書き換えられる過去と、書き換えられない記録。削除の自由と、記録の永続の間の緊張。
『1984』の記憶の穴
真理省の各室には、小さな穴があります。不都合な文書を投げ込むと、気送管で運ばれ、焼却炉に入ります。記録が消えると、その事実も、人々の記憶の中で、存在しなかったことになります。
コンテンツアドレスによる対抗
ファイルの内容から計算したハッシュで識別すれば、一文字でも書き換えると別の識別子になります。「改竄は自己証明される」(フェニックス・マニフェスト)。履歴が残れば、過去を静かに書き換えることはできません(IPFSと、内容アドレスの意味)。
しかし、記憶の穴を全否定してよいか
| 消すべき(と考えられる)もの | 理由 |
|---|---|
| 私人の住所・電話・家族構成 | 被害が現実に及ぶ |
| 名誉を毀損する虚偽 | 誤りを永続化する |
| 著作権侵害 | 権利者に損害が出る |
| 未成年に関する情報 | 保護の要請が強い |
オーウェルの描く記憶の穴は、権力が自分に不都合な真実を消す仕組みです。個人が、自分への不当な害を消してほしいという要請とは、構造が違います。両者を一緒にして「削除は悪」と言うのは、乱暴です。
設計の指針
- 権力に関する記録、公的な決定、公開された事実は、保存を原則にする。
- 私人の権利侵害を理由とする削除は、尊重する。
- どちらに該当するかの基準と手順を、事前に公開する(ミラー運用の点検:リスクと改善案)。
関連項目
Wikipedia ミラーで読む(wikipedia-is-dead.com)
実装側:マニフェスト ↗ / ネットワーク ↗ / 削除記事の救出 ↗ / 参加する ↗ 思想とURLの対応表